ハイカラさんの町並みを楽しむ「みやぎの明治村」登米キーワード集

〔擬洋風〕

登米市登米町「みやぎの明治村」でNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」取材も行われた教育資料館

明治時代、西洋に追いつこうと、小学校や警察署、役場など、それまでの日本にはなかった、近代的な建築が各地でたてられます。それらの建物は、江戸時代からの伝統を脱却した、あらたな建築デザインが目指されました。旧登米高等尋常小学校も、旧登米警察署庁舎も、そんな新風を目指す、ハイカラな洋風建築にみえます。けれども、よくみると、なにかおかしい。屋根は伝統的な日本瓦ですし、洋風の石造建築ではなく、大工さんがつくった木造建築。柱の頂点には、「イオニア式オーダー」と呼ばれる、西洋建築のディテールが採用されるものの、本家のヨーロッパ建築の形やプロポーションとは違う。見よう見まねで新たな西洋建築を目指しながら、実際は伝統的な日本建築の技術を応用した、明治はじめの建物を「擬洋風」の建築と呼びます。明治村を彩る小学校も、警察署も、ハイカラでありながら懐かしい雰囲気をもつのは、形は西洋を模しつつ、その技術や素材は日本の伝統技術が使われているからです。

〔動物のかざり〕

 

自然を愛でる日本人は、たてものの細かいディテールに、動物や植物の飾りを刻むことがよくあります。ヤマカノ醸造本社の門を横から見ると、屋根にめでたい「鶴」の彫刻があります。登米神社の正面は、「唐獅子」の精緻な彫刻で華やかです。また、登米に多く残る土蔵の腰部分をみると、漆喰の白い目地に黒い瓦が張られていることが多いです。「海鼠壁」(なまこかべ)と呼ばれる工法です。確かに、白い目地が海に生きる「海鼠」に似ています。

〔「蔵」のいろいろ〕

 

まちのここかしこにある「蔵」も注目です。これは何の蔵?と想像してみましょう。「蔵」と一言でいっても、いろいろな役割があります。食料を保管するのは「穀蔵」、家に伝来する家財道具を保管するのは「文庫蔵」。家宝を伝える「文庫蔵」は家の格式を誇るように、装飾的な要素を散りばめる特徴があります。外観を装飾で凝らす蔵をみかけたら、文庫蔵でしょう。また「板蔵」という、土壁の代わりに、杉の厚い板を柱にはめこんだ「蔵」も点在しています。この「板蔵」の外観は、現代建築の登米懐古館でもみることができます。そして、豪快な木組みでつくられた大きな土蔵をみかけたら、それは酒蔵や味噌醤油の醸造蔵でしょう。

〔スレート屋根〕

登米に来たら「屋根」を観察してみてください。よく見かけるのが「スレート屋根」です。粘土の瓦葺きや草の茅葺きと違って、石(玄昌石)を割ってつくるこの地方独特な屋根のつくり方です。この「スレート屋根」を観察すると、いろいろな葺き方がみえてきます。ウロコの文様だったり、菱形だったり、工夫を凝らしたパターンがあることがわかります。現代建築である登米懐古館でも、地元のこのスレートの技術が、屋根や舗装で活用されています。

〔格式を誇る「門」〕

とよまのまちなみには、大きく武家屋敷の街区と町家の街区があります。住んでいたのも「サムライ」と「町人」と違います。まちなみをみると、町人が住む町家はたてもの自体に飾りを凝らすのに対して、サムライが住む武家屋敷は「門」が家の顔のように構えるという違いがあります。武家屋敷は塀や庭に囲まれて、家自体が奥ゆかしく隠れているので、この「門」が家の格式を表現する重要なたてものになったのです。旧水沢県庁記念館の二本柱のシンプルな門は、「冠木門」という簡素ながら、実は格式高い形式です。

〔看板建築〕

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」のロケ地として注目されている登米市。その登米市登米町の看板建築の町並み

蔵造り商店街のまちなみに、たてもの全体をモルタルで塗って、看板のようなデザインとした店舗が点在しています。「看板建築」とも呼ばれる様式で、大正時代の関東大震災からの復興に際して、東京や横浜で流行したモダンなスタイルです。大正時代から昭和初期にかけて、登米の大工さんも東京へ行き、こうした最先端のモダンな建築様式を吸収して、地元でその見聞の成果を発揮したのです。